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トランプ時代の終わりの始まり
日本の命運握る米中間選挙

日本の外交や経済に大きな影響を与えるアメリカの政治は2026年、大きな転換点を迎えるかもしれません。
秋にトランプ大統領の今後を左右する議会中間選挙を控えているからです。

やりたい放題の1年

 アメリカの圧倒的な軍事力と経済力、さらにはMAGA を岩盤支持層とする選挙での高い集票力を後ろ盾に、就任以来、国の内外で傍若無人に振る舞ってきたトランプ大統領。
 外交面では、気候変動問題を話し合うパリ協定や世界保健機関(WHO)からの脱退に始まり、「アメリカ・ファースト」を掲げて敵対国だろうと同盟国だろうと関係なく高率の関税を次々と課す保護主義的貿易政策を展開。
 内政面でも、不法滞在か合法滞在かをきちんと確認せず、移民を手あたり次第に国外退去にし、在学生に反イスラエル的な言動を許す大学に対しては連邦補助金のカットをちらつかせながら言論の自由を封殺し、支持者の歓心を買うために民主党の牙城である大都市に「治安維持」と称して意味もなく連邦軍を派遣し、移民規制を厳しくするなか、南アフリカの白人は政治難民として喜んで受け入れるなど、まさにやりたい放題。
 多くのメディアや専門家から厳しく批判され続けても支持率が一向に下がらないので、時には余裕の態度すら見せてきました。ところが最近、政策や振る舞いに、明らかにこれまでとは違う変化が見え始めています。

突然の関税引き下げ

 例えば11月14日、輸入品に課す「相互関税」の対象から200品目を超える数の食料品を除外する大統領令に署名しました。除外対象となったのは、牛肉やトマト、アボカド、コーヒー、オレンジジュースなどいずれもアメリカ人の食卓に欠かせないものばかり。
 同20日には、ブラジル産の牛肉やコーヒーなど一部の食料品を追加関税の対象から除外する大統領令に署名。これらの食料品には10% の相互関税と別に40% の追加関税がかかっていました。
 自らを「タリフマン(関税男)」と呼び、関税を看板政策に掲げるトランプ大統領ですが、高率関税のせいで輸入品の価格が高騰し、国民の間から強い不満が出始めていたのです。
 移民政策についても変化の兆しが見え始めています。
 トランプ大統領は学生ビザの発給要件を厳格化するなど多くの外国人をアメリカの大学から締め出してきましたが、8月25日に突然、2023~24年にアメリカに留学した中国人の2倍以上にあたる60万人もの中国人に学生ビザを発給すると発表。「中国からの留学生なしでは大学の経営は厳しい」と釈明しました。

不支持率の上昇、MAGAの分裂

 変節を強いている最大の要因は支持率の異変です。
 トランプ大統領の支持率は強固な岩盤支持層に支えられ、40% 前後で推移してきました。一方、不支持率は少しずつ上昇して調査によっては60%を超えています。
 とりわけ増えているのが無党派層の不支持率。選挙は無党派層の投票行動が最終的な結果を大きく左右するだけに、トランプ氏は気が気でないに違いありません。
 不穏な動きも出ています。MAGA の内部分裂です。11月21日、MAGAの象徴と見られていた見られていたグリーン下院議員がトランプ氏を激しく批判した挙句、議員辞職を表明しました。
 またトランプ大統領は、少女買春などの罪で起訴され自殺した富豪のジェフリー・エプスタイン氏に関する資料の全面公開をこれまで頑なに拒んできました。資料には両氏の深い関係が記録されているとも言われています。結局、周囲の圧力に屈する形で資料の公開に同意しましたが、MAGA の一部は公開を拒むトランプ氏の姿勢に不満を募らせていました。
 こうなると問題は2026年11月に行われる議会の中間選挙です。
 トランプ大統領が好き勝手に振る舞える理由の一つは、議会の上下両院を与党共和党が支配しているからです。しかし、今の状況が秋まで続けば、選挙で共和党が負ける可能性が出てきました。選挙結果はそのときの経済状況や大統領の支持率に大きく左右されるからです。
 共和党の敗北はトランプ大統領の政治力にも影響します。残り2年の任期を残して、政治的影響力が急速に衰える「レイムダック」状態に陥る可能性すらあります。

内向き姿勢に喜ぶ中ロ、試練の日本

 そうしたシナリオを避けたいトランプ大統領は今後、選挙に勝つために「内向き姿勢」を強めると考えられます。
 外交で実績を残し、ノーベル平和賞を受賞するのがトランプ氏の野望ですが、「外交は票にならない」というのは世の東西を問わず政治の常識です。
 まずは物価高対策、雇用政策といった経済政策に全力を注いでくることでしょう。多くのアメリカ人が物価上昇と雇用の先行きに強い不安を抱いており、これが不支持率の上昇につながってるからです。  
 一部の産業で労働力不足を引き起こしている不法移民政策も、何らかの形で修正してくる可能性があります。
 内向きになるので、外交には当然身が入りません。すでにそれを見越してか、プーチン大統領はトランプ氏主導のウクライナ停戦協議に乗り気でなく、習近平国家主席は台湾問題で強気の姿勢を取り始めています。
 選挙戦の途中で共和党の劣勢が伝えられるような事態になれば、プーチン氏も習氏も一段と強気に出てくることでしょう。
 日本にもトランプ嫌いは大勢いますが、現在の国際情勢の中でトランプ大統領の影響力の低下が鮮明になれば、中国もロシアも日本に対し一段と居丈高な態度をとってくるでしょう。喜んでばかりはいられません。